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先物取引の判例集  

先物取引の判決には、被害者に過失なしとされる例や過失を認定される場合も
あります。以下に各地の裁判所での判例を簡単に紹介します。






[過失相殺3割] 大阪地方裁判所H16.3.11

原告は取引当時60歳の年金生活者



 被告会社との間で商品先物取引を委託した原告が、被告会社従業員による商品先物業界における自主規制に違反する行為によって損害を被ったと主張して、損害金及び遅延損害金の支払いを請求した事案


・ 取引継続段階の違法性
  新規委託者保護義務違反・過度な売買取引
  →取り扱い要領で、被告会社自身が新規委託者の保護育成期間と定めている3ヶ月
    間にはるかに満たない、わずか1ヵ月半の間に総計845枚にも及ぶ新規建玉を行
    なった
こと、限度枚数を取引の当初から拡大する手続きがとられていることから、
    新規委託者の保護に配慮した手続きがなされているとは言い難い。
    さらに、このような過大な建玉がなければ、損失が拡大することはなかったと認め
    られるし、取引開始3日後に値上がりしていた商品をいったん仕切り、その差益を
    他の商品に投入して、結果的に損失を増大させていると認められるが、原告が十
    分にリスクを理解したうえで行なったかは疑わしく
、新規委託者保護の趣旨からも
    その妥当性に疑問が持たれる。


・ 損害の発生及び損害額について
  原告は、本件取引において、2262万4914円の損失を被った。
  そして、これは被告らの勧誘により先物取引をしなければ本来被ることのなかった損失
  
であり、被告らの行為と相当因果関係のある損害と認められる。
  しかし、原告は、被告らから先物取引委託のガイドの交付を受けて説明を受け、一応
  の理解はあり、取引の最終的な判断は原告が行なっていた。
  さらに、原告は損失を取り戻すためとはいえ、投資を続けており、ある程度積極的に取
  引に関与
していた。
  したがって、原告にも本件取引について過失があったものといえ、過失を3割と認める
  のが相当である。





[過失相殺4割] 岡山地方裁判所倉敷支部H15.12.11

原告は東京工業品取引所等の商品取引所に所属する商品取引員
被告は原告倉敷支店の顧客として商品先物取引を行なった者で、パイプの切断加工等を業とする小規模同族会社を経営


原告が被告に対し、東京工業品取引所等の商品市場における取引委託契約に基づき、
差損金債務及びこれに対する遅延損害金の支払いを求めて、本訴を提起した事案



被告が原告に対し、主位的に不法行為に基づき、予備的に債務不履行に基づいて、被告の支払額及び弁護士費用及び遅延損害金の支払いを求めて、反訴を提起した


一般投資家が商品先物取引を行なう場合には、専門家である商品取引員に委託する必要があるが、委託者である顧客は、通常受託者である商品取引員らの知識等を信頼してその助言を参考にするのが通常である。商品取引員らは、顧客が不足の損害を被ることのないよう十分に配慮すべき義務がある。


具体的には
商品先物取引の新規勧誘に際し、仕組み、特徴及び危険性の程度についてわかりや
  すく説明し、十分な理解を得なければならない

  →被告は小規模同族会社を経営しているというにすぎず、豊富な資金力を有するわけ
    でなく、取引に関する知識、経験が十分とはいえなかった。
しかし、被告らに対し、
    ガイドブックを渡し、簡単に説明したのみで、結果、被告らは一種の金融商品のよ
    うな感覚で取引を開始し、短期間に多数回にわたり大量の商品先物取引を安易に
    継続
したものといえる
顧客が的確な認識形成を行なうのを妨げるような断定的判断等を提供してはならない
  →「絶対に大丈夫」「もうかります」などと取引を勧誘し、「1億円も夢ではない」などと
    言って取引を拡大させ、「一気に回復できる」と取引を継続させた。これらの言動
    により、被告らは、取引の開始、規模及び終了等の判断を誤ったものといわなけ
    ればならない
顧客の取引目的、財産状態及び取引経験等に照らして明らかに過当な負担を伴う取引
  を勧誘することを回避すべき

  →取引は約18ヶ月間に、9商品に渡り、延べ5349枚に及び、差引損益4621万2132円
    の損に併せて、手数料の額は3666万7200円に達するなど、被告の財産状態や投
    資経験等に照らして明らかに過当な取引を勧誘したものというべき
    したがって、原告は被告に生じた損害を賠償すべき責任を負う


しかし、被告はその当時、すでに数ヶ月間に渡り、他社との取引を経験していたので、取引員が、取引に関する一応の知識があると考えて、被告に十分な説明をしなかったとしてもあながち責められないし、被告が取引のリスクについて十分に認識して対処し得たはずであるにもかかわらず、安易に取引に応じたことは、慎重さに欠ける面があった。
よって、4割の過失相殺を行なうのが相当である。

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[過失相殺5割(X1)、5割(X2)、1割5分(X3)] 名古屋地方裁判所H16.2.13

原 告 被 告
損害金本訴請求事件(甲事件) 売買取引の受託会社
(以下Yという)
以下X1,X2という
損害賠償反訴請求事件(乙事件) X1,X2 Y
損害賠償請求事件(丙事件) X3 Y
X1、X2、X3は製陶業を営んでいる。X2はX1の母(71歳)であり、X3はX1の姉である。



 商品取引による未払い損金および遅延損害金の支払いを求めている事案



 Yによる勧誘行為および売買取引が不法行為に当たるとして、委託証拠金および弁護士  費用の合計額相当の損害賠償および遅延損害金の支払いを求めている事案



 乙事件の請求の原因は、X1が取引を行なったH11.9〜H12.8.14(778万8880円の利  益)、H12.8.29〜H12.12.12のうち後半の取引に限られているものである。

・ 一任売買取引
X1、X2は独自の相場観を持っておらず、担当者からの状況説明や提示された選択肢を絶対的なものとして疑わずにその選択肢の範囲内で回答しており、そのような取引は真に被告らの判断によるものとは言いがたい。
また、Yの従業員が、手数料収入をあげるために強引な勧誘をしたり、十分な説明をしないまま多数の取引を行なった可能性を否定できない。
・ 無断売買
H12.8.29〜9.11の間、被告らになんら連絡しないまま、被告らの名義で商品先物取引を行なった事が推認される。
・ 無登録外務員による勧誘
Y従業員が無登録で外務員としての業務を行なった事が認められ、この従業員が担当していた後半の取引はYのX1、X2に対する不法行為にあたるというべきである。

他方、X1は前半の取引を通じて、
@ 商品先物取引を行なうことによる一般的な危険性を認識していたと考えられる。
A 前半の取引を益金を出して終了した段階で取引を終了することが出来たにもかかわらず、さらに後半の取引を開始しており、積極的な態度を有していたことが認められる。
以上のことから、X1にも過失があったというべきであり、その過失割合は5割とするのが相当である。X2の後半の取引についても、過失割合を5割とするのが相当である。



 以上によれば、後半の取引は、YのX1、X2に対する不法行為にあたるから、これに基づく未精算金の支払請求は信義則に反し、Yの甲事件請求は理由がない。



 ・ 適合性の原則違反
X3はパートタイム勤務の主婦であり、商品先物取引に関し不適格者であるというべきである。これに対し、取引を開始するにあたって作成した取引事前申込書には、担当者がX3の年収、預貯金など事実と異なることを知りつつあえて記載させた。
・ 新規委託者保護育成義務違反
新規の顧客の適格性を、取引経験の有無、年齢、職業および役職、年収等に応じて数値化し、これに基づいて最初3ヶ月の取引枚数を決定することになっているが、X3の当初取引枚数は対応する50枚ではなくそれよりも多い150枚とされたことが認められ、X3が50枚の範囲を越えて取引を拡大する意図を有していた可能性を否定できない。これは、新規委託者保護育成義務違反にあたるというべきである。
・ 説明義務違反
Y担当者が行なった10分ないし15分程度の説明では、X3が取引に内在する危険性を十分理解したと考えることは困難であり、X3が作成した書面および確認書の記載は、担当者が指示して記載させたものであることがうかがわれる。
・ 無断売買
X3が海外旅行に行っていた間、担当者はX3名義で取引を行なっていたが、X3がこのような取引を指示していたと認めるに足りる証拠はない。
・ 一任売買
X3が行なった取引の中には、直し、途転、両建および日計りがあったが、このような複雑な取引方法について、X3の投資経験に照らすと、自らの判断で指示したとは考えにくい。
また、X3には取引に関する大まかな方針を述べるにとどまり、個々の取引はYの担当者の判断で行なわれたことが推認される。

他方、
@ X3はX1が商品先物取引を行なっていたことから安易に勧誘に応じた。
A 危険のあることは承知していた。
B 追証が必要になった際も、夫に相談せず取引を継続した。
C Yの従業員が大量退職したときも、取引を中止せず積極的な態度を有していた。
以上のことから、X3にも過失があったというべきであり、その過失割合は1割5分が相当である。

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[過失相殺2割] 名古屋地方裁判所H16.2.27

原告(当時25歳)は造船会社で船にエンジンを備え付ける作業等に従事

(以下「本訴事件」という)
 被告に委託して商品先物取引を行なった原告が、被告らが会社ぐるみで組織的に一連の不法行為を行なったとして、原告が被告会社に委託証拠金として預けた金員から払い戻し分を差し引いた金額、慰謝料および弁護士費用の合計ならびに遅延損害金の支払いを求めた事案である


(以下「反訴事件」という)
 原告の被告会社従業員に対する強盗殺人によって、強取金額の他に弔慶金および葬儀関係費用の支払い、遅延損害金の支払いを求めた事案である


損害賠償請求事件
・ 適合性原則違反
原告の年齢(被告会社は26歳未満を勧誘対象外としている)、職業(現場で製造業に従事している原告には刻々と変動する相場動向に常に注意・判断できる時間的余裕がない)、取引経験(皆無)および資産状況(月給14万、預金110万、生命保険50万、現金20万)から、被告会社従業員が原告を勧誘した行為は適合性原則に反する。
・ 一任売買
本件取引は、原告の自主的な判断を待つことなく、被告会社従業員らが押し付ける相場予測虚偽又は誤解を生じさせかねない説明によって誘導されたものと認められ、実質的には一任売買に該当する。
・ 断定的判断の提供
新聞の切抜きなどの資料を示し、値動き予測の正確性を強調し、原告の信頼に乗じて益金全額を証拠金に振り替えてまで取引を執拗に勧誘した行為は断定的判断を提供しての勧誘行為に該当する。
・ 仕切拒否
原告が手仕舞いの意思を表示したのに対し、今決済すると更なる入金が必要である等と虚偽の事実を申し向けて上記意思表示を撤回させたのは仕切拒否ないし回避に該当する。
・ 誠実公正義務違反
損失を出している商品と連動する他商品の反対の建玉によって表面上の利益を出し、原告の損勘定に対する感覚を誤らせつつ、損の拡大する商品の建て玉を放置して最終的には損失を被らせることを意図した疑いが濃い。
また、被告会社従業員は、すぐに返済できるかのように述べて消費者金融業者からの借入を示唆しており、違法性の高い行為といわざるを得ない。
さらに、追従の幅が広がるなどと虚偽の事実を告げてまで、本来返還すべき余剰金を使って取引を拡大させ、これらの行為は誠実公正義務に反する。
・ 過当取引ないし新規委託者保護義務違反
被告会社は、未経験者で資金がないと訴える原告に対し、わずか2ヶ月足らずの間に借入金まで投入させて建玉400枚を超える過大な取引をさせたのであるから、不法行為に該当すると認められる。

<原告が被った損害>
・ 財産的損害
本件取引に関し、委託証拠金として預けた金員から払戻分を差し引いた717万0884円の損害を被ったことが認められる。
・ 精神的損害
上記一連の不法行為によって精神的に追い込まれ、これが強盗殺人の発端となったことは否定できないが、その程度の精神状態にまで至ったことには原告自身の資質による面が大きく、本件取引の開始および損失の拡大には原告にも慎重さを欠く点があったと認められること等を考慮すると、財産的損害の賠償によっては償われないほどの精神的損害を被ったと認めることはできない。

上記のように本件取引の開始および損失の拡大には原告にも慎重さを欠く点があったが、従業員殺害前における一連の取引は被告会社従業員らによる違反行為を原因とするものである。しかし、殺害後も追証を支払い新たな取引をして結果として損失となっている点については原告の過失を看過することはできない。
以上の点から、2割の過失相殺をするのが相当である。


同反訴請求事件
被告会社が遺族に対し、弔慰金を贈ったが、弔慰金の支給が原告による殺害行為と相当因果関係ある損害と認めることは出来ない。
被告会社は葬儀関係費用を負担したが、年齢や社会的地位を考慮すると負担金額のうち120万をもって社会通念上相当な葬儀費用と認めることができ、その範囲で損害賠償請求権を行使することが出来る。
また、被告会社は原告によって現金を強取されるという損害も被っており、これらの金員の支払いを認容する。

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[過失相殺4割] 名古屋地方裁判所H16.3.2

原告は商品取引所法の適用を受ける商品取引所の市場における上場商品の売買・取次等を目的とする株式会社
被告会社は羽根布団、クッションの製造および販売を目的とする株式会社
被告Yは同社の代表取締役


 原告と被告らがそれぞれ商品先物取引の委託契約を締結し、被告らが原告を介して先物取引を行なった結果、帳尻損金が発生したとして、商品先物取引委託契約に基づいて、帳尻損金の支払いを求めた事案

 被告Yまたは被告らが原告外務員の違法な勧誘および一連の先物取引受託行為によって損害を被ったとして、不法行為に基づき損害賠償を求めた事案


・被告会社名義の先物取引の結果は誰に帰属するか
Yは税金対策のためと勧められ、被告会社名義での取引を開始した。ということは、Yが当該取引での損益が被告会社に帰属することを前提としていたといえる。また、被告会社名義の取引において預託された証拠金の大部分が被告会社のYに対する貸付金から支出されているが、実質的には、被告会社の資金から支出されたものといえる。
以上から、被告会社名義の取引の結果は被告会社に帰属するものと認められる。

・原告とYの間の先物取引の勧誘及び一連の取引受託行為について、不法行為があったか
<適合性原則違反>
Yは本件取引開始時は56歳であり、被告会社の経営を約20年行い、金銭借り入れ手続き、担保提供手続き等を自ら行なっていたこと、以前に株式取引を経験していたこと、十分な資力があったことから、不適格者とは認められない。しかし、被告らは3月9日時点で、相当程度投資意欲が減退しており、資力が悪化し、解消することはなく、同日時点で不適格者となったが、原告外務員はその事実を認識していたのに取引を勧誘した。従って、3月9日以降の勧誘は、被告らに対する不法行為にあたる。
<新規委託者保護義務違反>
Yは商品先物取引の経験はなく、金融業務の専門家でもないのであるから、新規委託者として保護すべき必要性が高かったし、被告会社の取引もYが一人で行なっていたので、保護すべきであった。
また、Yに「取引にあたっては、余裕資金を保持した取引を励行させる」という受託業務管理規則の趣旨に反する認定をし、取引を行なわせた。
さらに、習熟期間に行なわれた第2回の審査により枚数の制限がなくなったと評価せざるを得ないが、このような審査の態様、取引の勧誘も受託業務管理規則の趣旨に反する。
また、被告会社の取引についても、上記Yの全取引と同様に、原告外務員のした行為は不法行為にあたるものと認めるのが相当である。
<両建>
本件取引を開始してから1ヶ月しか経過していないYに、両建かつ難平という複雑な取引を進める合理的理由はなく、両建を利用して不当な委託手数料稼ぎ等を意図していたものと認められ、このような両建の勧誘は、Yに対する不法行為にあたると認められる。
<仕切指示に対する回避、拒否>
Yが文書による仕切指示という明確な意思を表示したが、その後の複数回の仕切指示にも原告外務員は直ちに従うことなく取引の継続を説得したことは、不法行為にあたる。

・ 損害額
Yは会社経営者として実務経験が豊富であり、以前に株式取引を行なって損失を被った経験を有すること、本件取引開始時には商品先物取引の仕組みや危険について説明を受けたこと、建玉や取引の継続にあたっては自ら決定したこと、特に全取引の仕切を決意したにもかかわらず、説得によって早期に翻意していることなどからすれば、本件取引も原則的には自己の判断と責任において行なったといえる。これにYが自ら被告会社の資金から金銭を借り入れて投下資金としたために取引規模が拡大したことを併せ考えると、被告らの過失割合を40%とする。

・ 原告の帳尻損金請求は信義則に違反するか
本件取引の大部分が原告外務員の不法行為によるものであり、原告は使用者責任を負うのだから、原告が被告らに対し帳尻損金を請求することは信義則に反し許されない。


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[過失相殺2割] 神戸地方裁判所H16.2.5

原告は76歳の女性(無職)

<原告の主張を認めたもの>
 ・適合性違反、新規委託者保護義務違反
  原告は76歳で年金生活をしていた無職の女性であり、先物取引に必要な知識や経験
  もなく、取引についての説明を受けてはいたが、年齢等に相当する程度の理解力、判
  断力であって、十分に理解するには至っていなかった。
  また、適格性の審査も取引の説明を兼ねた15分程度の面談で適格性を確認するに足
  るものではない。
  上記のことから十分な管理が必要な顧客であることが認められた原告に対し、わずか
  1ヶ月の間に5183万4750円もの巨額の損失を与えた。
 ・断定的判断の提供
  高齢で理解力、判断力が低く、説明を鵜呑みにする恐れのある原告に対し、ペイオフ
  対策などを材料に金が値上がりするとの断定的判断を提供し、執拗に勧誘した行為は
  不法行為を構成するものというべきである。
<過失相殺>
  適合性原則や新規委託者保護義務に反した勧誘であるが、原告が説明を聞いて吟味
  ・検討し、十分に理解できない場合は第三者に相談していれば、取引を開始せず、ま
  たは早期に中止し、損失を少なくしえた。
  それをせず、勧誘されるままに漫然と取引を続けたことについては、原告も相応の責任
  を免れない。
  しかるところ、双方の過失の程度、態様、特に被告らが、原告の無知、無経験を利用し
  、自らの証拠金獲得のために原告に多額の証拠金を拠出させた点でその責任は重大
  であることなどを考慮すると、過失相殺として、原告の損害のうち2割を現ずるのが相当
  である。


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[過失相殺なし] 大阪地方裁判所H16.2.10

原告は59歳の男性(管理者として勤務)

・適合性違反
 原告は投機取引の経験はなかったものの、4年制大学を卒業した学歴を有し、取引当時
 、管理者の地位にあったものであり、先物取引の仕組みおよび危険性を理解して自己の
 判断で売買を行う能力を欠いていたものとまでは認められない。
 また、取引開始の際、預貯金が1200万円あり、投資予定額は1000万円である旨申告
 していた他、原告自身にも妻にも収入があったことなどから、損失に耐え得る資力を有
 しないものとまでは認められない。
 しかし、約2ヶ月間という短期間の取引で先物取引の初心者である原告に1092万3000
 円もの損失を生じさせたことは、明らかに過大な取引で、適合性原則の遵守義務に違反
 するものといわざるを得ない。
・断定的判断の提供・説明義務違反・両建
 原告に対し「必ず1ヶ月で127円に上がる」などと断定的判断を提供して取引を開始させ
 その後も「必ず値上がりする」などの断定的判断を提供して取引規模を過剰に拡大させ
 本件取引を継続させた。
 本件取引の勧誘の際、原告に対して先物取引の仕組みおよび危険性について解説した
 パンフレットを交付したが、「危険はあっても回避する方法がある」「本件取引は利益にな
 る」などといって勧誘したのであるから、原告に先物取引の危険性を説明しなかったのと
 異なるところはない。
 両建は経済的な合理性が乏しいだけでなく、適切に決済するために困難な判断を要求
 されることから、仕切りとの相違を説明する義務があるが、その旨の説明を怠っただけ
 でなく、原告に対し、両建てが損失の拡大を防止し、損失を回復するための唯一の手段
 であるかのような説明をして勧誘したものと認められ、違法性を有するものといわざるを
 得ない。
・仕切り拒否
 原告による仕切り指示を拒否したものと認められ、違法な仕切り拒否に該当するという
 べきである。


上記一連の行為は、原告に先物取引を開始・継続させるために一体的・連続的に行われ
たものといわざるを得ないので、被告従業員らは本件取引により原告に生じた損害を賠償
する責任があることになる。


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[被害者に過失相殺なしの判決<1>] 大阪高等裁判所H15.9.25

被害者は公立学校の教員で当時57歳、かつて小額の株取引をしたことはあるが先物取引は始めてである。

業者は、平成13年の4月に「5月の連休前には2倍、3倍にしてみせる。儲けさせるからみてほしい。」と申し向けて、保証金100万円の買建玉をして取引に引き込み、以降、営業員は頻繁に電話をして「絶対儲かる」などと言って取引を拡大させた。

  1. 営業員の一連の連絡につき、一部を除いては、被害者の指図に基づかない。
  2. 買い直しは「建玉の枚数及び取引価格が大きくなるため、少しの値下がりで多額の差損が出ることとなる」「頻繁に行うと委託手数料の負担が増大する」「資金を追加して建玉を買い建てる方が危険が少ない」
  3. 両建は「不合理で、被害者が自発的に両建を発想するとは考えられない」「商取法136条の18第1号に違反する行為である」
などの理由で、先物取引会社とその従業員の不法行為を認め、支払った金員全額と弁護士費用の賠償を認め、被害者に過失はないとした。



[被害者に過失相殺なしの判決<2>] 奈良地方裁判所H14.8.23

被害者は農協職員

 被害者は農協職員であり、いかに述べるような事情を認定し

  1. 原告が特に投資や投機をしなければならないような動機は見当たらない。
  2. 損を取り戻すため、実父の実印を昌用して農協から高額の借り入れを起こすなどして、多額の証拠金をつぎ込ませたことからすると、被告の従業員において、原告を錯誤に陥らせ、困惑させて取引を継続させたものということができる。
  3. 新規委託者保護規定違反については「この管理規定を設けた趣旨からすると、同規定違反して新規委託者から売買の受託を行ったときは、委託者の先物取引に対する理解力などの属性、資力、取引の経過などの諸事情をも参酌して、違反行為が、社会的相当性を逸脱したと認められる場合には、違法の評価を受けると解するのが相当である」
  4. 無意味な反復売買は、その都度、委託手数料の支払を強いる結果、顧客の損失を拡大させるものとなる。
  5. 委託者の手仕舞いの指示を即座に履行せず、新たに取引(不適切な両建を含む)を勧めるなど委託者の意思に反する取引を勧めること。
被害者の請求を認め、過失相殺はしなかった。



[被害者に過失相殺なしの判決<3>] 仙台地方裁判所H16.2.27

原告は元特定郵便局長

 判決の内容は

  1. 断定的判断の提供
    外務員はニューヨークテロ事件という具体的な事実を関連させるなどして、ガソリン価格が値上がり又は値下がりし、確実に利益を得ることができるなどと断定的判断の提供をなし、原告に本件取引を勧誘し、
  2. 新規委託者保護規定違反
    自己責任で取引ができるだけの知識・経験を備える間もなかった原告に、取引開始後三ヶ月以内に、原告の資産内容を知りながら、最大3150万円を交付させ、4857枚の建て玉をさせ、
  3. 実質上の一任売買
    商品取引の経験のなかった原告が実質上外務員の言いなりであることを利用して、実質上の一任売買により、本件取引終了までに5597枚の建て玉を建てさせ、
  4. 両建
    原告が十分意義を理解しないまま行われた常時かつ枚数の多い両建を含んでいるものであり、
  5. 仕切り拒否
    本件取引の継続に経済的にも精神的にも耐えかねた原告が再三取引中止を申し入れたにも関らず、社会通念上許された範囲を超えて原告を説得して翻意させたものである
以上の事実から、原告に過失がないものと認め、3220万4470円の支払義務があることを認めた。

被害者の取引経緯

宗教法人に37年間勤務し、定年退職した60歳の男性がたった二週間の間に、老後の蓄えとして貯めていた1500万円を奪われた。
被害者の男性は奪われた1500万円の返還を求めて大阪地方裁判所に訴訟を提起した。この訴訟において大阪地方裁判所は過失相殺を否定し、被害者の支払金全額の返還を命じ、弁護士費用の損害を認めた。
以下にその取引の経緯を紹介します。

●勧誘の電話の後に、職場や家に押しかけるように訪問し、断れない状況をつくる

 当時59歳であった被害者男性H(原告)の職場に、平成14年7月4日被告会社のZより再三電話があり、先物取引を勧誘されたが、いずれも断っていた。しかし資料だけでも送らせて欲しいとの申入れをやむなく受け入れ、同月8日に被告会社から資料が送付されてきた。
  その2日後、原告はZから職場の近くに来ているので寄らせてほしいなどと言われ、断ったものの、Zが職場を訪問してきたので、Zと話をせざるを得なくなり、話を聞くことにした。Zは原告に対し、約20分にわたり、「350万円が一ヶ月後には1000万円になる。絶対儲かる」などを繰り返し、東京ゴムの買建を勧誘した。原告は、先物取引の仕組み及び危険性を十分理解できなかったが、Zの熱心さと原告の息子と同年代であることに親近感を覚え、東京ゴムを約100万円分買い建てることに承諾した。


●言葉巧みなベテランの外務員に担当替えしていく

 翌日7月11日午後1時ごろ、Zが上司である係長のIとともに原告の職場を訪れ、約15分にわたり、東京ゴムについて相場情報を記載した書面や利益の計算等を書いて示し、今年中にはゴムが値上がりするからと説明し、原告から101万円を入金させた。その際Iは原告に書類を渡し、形式的なものであるからと説明しただけで、その書類に署名押印させた。またIはこの時、他会社で1年間金の取引を行っていた経験者である旨の虚偽の記載をするよう指示している。
  同日の午後3時ごろ、Iより原告の職場に電話があり、東京ゴム14枚の買建が成立した旨を報告したが、その際、更に、「店長が特別に持っている東京ゴムは絶対上がります。二週間で二倍三倍になる。これだけ特別です。私の役職をかけてもいい」と告げて、その上司であるAに電話を代わった。そしてAは「私が絶対責任持ちます。これだけ特別です」と言い、更に「今後ゴム指数が絶対に上がるのでこれもどうですか?」とゴム指数も勧められ、原告は断ったが、Aは「元本は保証します。信頼してください」と続け、Aの「これだけ特別」という言葉を信用してしまい、東京ゴムとゴム指数の買建を指示した。


●営業成績をあげるため、虚偽の申告を指示

 翌12日午前11時ごろ、東京ゴムと大阪ゴム指数の委託証拠金合計925万円を預かるため、原告の職場を訪問した。その際、Iは「当社の管理部のFがH(原告)さんの取引経験について調査しにくるので、その時は、この間書類に書いてもらったように、他会社で取引していたということにしてほしい」と要請し、原告はこれを承諾した。
  また同日午後5時ごろAとその上司副部長のJの訪問を受け、その際、彼らからも、Iの指示どおり管理部のFに取引経験があるという虚偽の申告をするよう念を押された。
  同月15日、管理部Fの訪問を受け、取引経験があるかどうか聞かれたので、原告はIとA及びJの指示どおり、先物取引経験があるとの回答をした。
  これは新規委託者保護の為の取引制限を逸脱し、I自身の営業成績をあげるためのものであった。


●投入資金を追加させていく手口

 7月15日午後1時30分頃、原告はIから電話があり「ゴムが暴落し始めたので、両建てをしなければならない。511万5000円をすぐ用意して下さい。」と言われ、原告が「そんなお金はもうない」と断ると「210万円だけでも用意しなければ、もっと損をしますよ」と言われ、原告はやむなく210万円を入金した。
  同日午後四時過ぎに、原告はIに電話をしたところ、「両建てをしたから大丈夫。うまく操作して売りと買いとを外していく、損はさせない」と言っていた。
  しかし、Iがそう言っていたのにも関わらず、7月25日被告会社のTが職場に電話してきて、「値下がり傾向なのですぐ420万円が必要なのです。盗んできてでも用意してください。」と言ってきた。被害者は「もうそんなお金はない」と言うと「半分の210万円だけでも用意して。毎日350万円ずつの損が出ますよ。盗んででも何でも用意して。」とわめくように言い「午後3時には取引行かせるから、それまでに用意しておくように。現金を受け取る前に両建てをしておきますから、これで大丈夫です。」と言った。すでに原告の貯金は200万円ほどになっていたが、これを渡さないと毎日350万円の損が出ると言う極度の緊張と不安にパニックになり、原告は承諾をせざるを得なかった。
  その後の8月5日に、またIから「両建てのために1150万円が今すぐ必要です」とわめくような要求の電話があり、「もうお金はありません」と言って原告は断った。その通話内容をIから報告されたTは、同日の後場三節において、Tの裁量で両建をし、原告の職場に電話をしてきて「1150万円と聞いてびっくりしたでしょう。私の携帯を教えておくので困ったときは電話をしてください。Iは叱っておきました。」と謝罪をした後、「両建てのためにあと367万円だけ用意すれば助かる」とまた要求してきた。更に「金を受け取っていないときに両建てをするのは法律違反なのですが、Hさん(原告)のために先に両建てをしておきましたから大丈夫です。」と言い、貯金を全て入金してしまった原告は「私にはお金がもう無いのです。妻にも打ち明けました」と言ってこれを拒否した。
  8月6日午前11時ごろ、Tは原告の職場に電話を入れ「これを法律的にこられるとまずい。現金を入金していないのに両建てを組むことは違反なんです。私はクビになるし、会社は営業停止になってしまいます」と言って追証の入金を指示。しかし原告はなおも断った。


●仕切拒否

 翌8月7日午前10時に、Tは再度原告の職場に電話をしてきたので、原告は取引中止を申し出たが、「今手仕舞いをすると1200万円の損になる」と脅してきて、執拗に取引継続を勧誘し「今すぐ終わりにしたい」という原告の決済の指示を取り合わなかった。  同日午後4時50分頃、原告の職場にIが訪問し、損失を出したことについての謝罪とともに損を回復したいなどと言って取引継続をすすめることに終始し、直ちに決済をするよう再三指示を出した原告に対し、Iは応じなかった。  それ以降、原告から絞りとるものがもうないと分かったためか、被告会社のI、A、Tらから一切電話がこなくなった。


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